第一回 雑貨のMD 「2:クリエイターということ」
こんにちは! 門田です。
日々の商品企画、上手く進んでいますか?
順調なときも、壁にぶち当たった時も、遠く将来を見据えた企画をしていきましょう。
では、『信者を作る! 商品企画』第一弾は、「クリエイターということ」と題して、そもそも商品企画とは何? ということを考えてみましょう。
これを読んでいる方は、たぶんに「売るための商品」を考えている方だと思います。会社勤めの方も、独立してビジネスされている方もおられるでしょう。
どちらにしても、「物を作って売る」ということは、売れるための品質、見栄え(外観デザイン)も大切ですし、なによりそのモノの価値に見合った価格であるということが大切です。
では、モノの価値に見合った価格とはどういうことでしょう?
ここに、AとBという時計があるとします。
どちらも同じような素材、形状、機能で見た目ではほとんど同じ様に見えます。でも、AはBの10倍の値段がつけられています。
普通に考えると誰もがBを選んでしまいそうですが、実際はAの方が何倍も売上げを上げています。
さて、どのような場合に、こんなことが起こるのでしょう?
ちょっと考えてみて下さい。
はい、よろしいでしょうか?
色々なことが考えられますね。
- Aは製造技術者が熟練の職人である。
- Aは見えない部分の部品の数がBの3倍多く、精密である。(別に3倍でなくてもいいですが)
- 見た目は同じようでもAの素材は特殊な物が使われている。
- Aは永久保証がつけられている。(絶対的な品質へのこだわり)
- Aは限定品で、生産数量が極端に少ないプレミアモデル。
- Aは何百年もの歴史あるメーカーが作っている。(ブランド力)
- Aは、ある有名人が使っていた。(コレクションもの)
どうでしょう? 他にも答えは出てくるでしょう。
買う人によってモノに対する価値の基準は変わります。ですので、たとえ同じような見栄えや機能であっても、そのモノが持つ価値を買う人にきちんと伝えることにより、価格も変えることができます。
お客様が価値に対する価格を納得されたとき、はじめて「売れる状態」になります。
出来るだけ多くの人に商品を提供したい、という商品企画もあります。
私が以前お手伝いしていたブランドに、sou-souさんという和テイストのアパレルブランドがありました。
そこに大阪天王寺でがま口を作り納めていたのですが、私自身のメインブランドは「宮内庁御用職人謹製革トランク」ですので、「革トランクのsou-souオリジナルもやりませんか?」と提案したところ、以下のような返答をいただきました。
「京都には西陣織や友禅など、伝統的な文化が残っている。今は工芸品のようになってとても高い値段がついて、庶民の手にはなかなか届けられない。でも、西陣や友禅も、できた当時は多くの庶民が手に入れられる価格で、それで広まっていき当時の大流行になった。だからいまだに文化として残っている。
だから、伝統文化として残したかったら、過去の焼き直しではなく、今の若者にファッションとして大流行させられるようなデザインや価格でないと、単なる自己満足や行政主導の面白くもない物になってしまう」
どうでしょう? 深みのある言葉でしょ?
私の作る鞄は、最低でも20万は下らない物なので、「お客様が成長して、20万の鞄が買えるようになるか、数万円で販売出来る企画が立てられるならやりましょう」ということで、この話は終わりました。
高くても最高レベルの物を追求するのもクリエイターの役目。逆に、安くして広く一般に普及させて、やがて文化となるレベルまで商品開発を続けるのもクリエイターの役目。
企業内デザイナーは会社の方針でモノ作りに取組む必要があり自由にモノ作りができるわけではありませんが、会社の成長の先にある未来に、クリエイターとして社会に何を作り上げられるのか?
また、独立系のクリエイターは、自分の将来に向かって、どのようなモノ作りを進めていけば、将来の自分や社会にとって益のあるモノ作りとなるのか?
今日作って明日売って明後日はもう売れないから次のモノ作り、そんなモノ作りでは、いつまでたっても目先の時間と資金に追われ、未来には何も残らないのではないでしょうか?
この連載を通して、「信者を作る! 商品企画」を考えていきます。
そのためには、クリエイター自身が信者を作れる考え方をしていかなければなりません。そんな考え方もまじえて、これからの商品企画を考えていきましょう。
では、次回をお楽しみに。
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