第一回 雑貨のMD 「6:ファッション系雑貨の企画」
今回も引続き「ファッション系雑貨の企画」についてお届けします。
【クリエイター系雑貨】
クリエイター自身の感性を作品(商品)につめ込んだモノ作りで、マーケットへ打ち出す方法があります。芸術作品ではなく、販売するモノとして商品を作ります。
ここで一つ大きな壁があります。
売るための価格設定、より売上げを上げるための生産方法です。ここをクリア出来ないと、いつまでたっても一部の共感者だけにしか作品を提供出来ず、ビジネスとしての取組みは出来ません。
いつの時代も「若手クリエイター」というのはもてはやされます。ファッション業界は特に、新しい感性を求め続けているからです。
全国各地、世界各地で新人デザイナー・クリエイターを発掘するイベントが毎年行われています。ここで注目を集め、上手い具合にスポンサーがつく事は万人に一人もいないでしょう。しかし、ビジネスのセンスがあるなしで、それ以降の創作活動は全然違った物になります。
マーケットが欲しがる商品を、マーケットが受入れてくれる価格で、マーケットの需要に応じて提供出来るか? が問われます。
つまりは、素材・資材の適量適価での手当ができて、充分な品質の生産体制を作る事ができるか?
また一連の、素材の仕入→生産→販売→代金の回収というサイクルが回るようになるまでの資金が準備出来るか? ということです。
趣味の延長でビジネスを行うと、思わぬリスクを負う事がありますし、長続きさせるのが難しくなります。まずは趣味としてやっていくことがいいのか、または、ビジネスに発展させたい場合は、きちんと利益を出せるサイクルを構築出来るのかをシュミレーションする事が重要です。
【サングラス】
「サングラス」と商材を特定していますが、一時期、私自身が扱っていましたので、その時の事を書きます。
ヨーロッパへ度々出掛けていると、白人系の方は普段からよくサングラスをかけている事に気づきました。そして、またそれがカッコイイ。ということで、感化されやすい私は、20代のころからサングラスをよく掛けていました。
(白人系の方は瞳も色素が薄いため光に対して敏感で、瞳が黒い人種より同じ光でもより眩しく感じるため、普段からよくサングラスを使用します)
そんなことで、雑貨好きだったこともあり「いずれサングラスショップを開きたい」という思いがありました。
そんな中、あるとき「空いている場所があるけど、何かやってくれないか?」と言う話があった時に、即決で「サングラスショップやります」と応えていました。
それからサングラス/眼鏡業界の調査を始め、福井県の鯖江市まで行き眼鏡メーカー2社と取引の約束をすることが出来ました。
丁度、世間で眼鏡のセレクトショップブームが始まろうとしている時でした。
1999年、当時はまだ激安眼鏡チェーン店は広まっておらず、昔ながらの業界ルールが通っていました。曰く「眼鏡屋は、眼鏡一本売れれば3日は家族が食っていける」時代でした。
フレームの仕入が上代の20〜30%、レンズにいたっては上代の10%ほど。ほとんどが技術料という名目で、眼鏡屋さんの利益になっていました。
一般の雑貨卸が中国の眼鏡工場から直接仕入れ、一律1000円で販売をはじめだした、まさに眼鏡業界の再編成が始まる大転換期でした。
そんな業界でしたが、アパレル系の他の雑貨に比べて利益率が大きかったので、まだまだ様々な販売方法にチャレンジする事が出来ました。
取引をはじめた眼鏡メーカーは、自社店舗と既存眼鏡セレクトショップ向けの高級ライン、量販型の中級ラインを扱い、中級ラインは毎シーズン100型以上のモデルを出し、それぞれに色展開があります。
また、メーカーとして相応の在庫を積んでいましたので、その中から選んだ物に「Galas」というブランド名(ショップ名を「Galas」ガラスとしたので)をつけて店頭販売をはじめました。ブランド名はシルク印刷で入れられ、1本単位で加工を受けてくれました。
サングラスショップを始めて間もなく、大手アパレルメーカーのSPAショップの雑貨ブランドより「サングラスを納めて欲しい」という要望をいただき、翌シーズンより、Galasと同様にそこの雑貨ブランド名を付けた商品を納入する事となりました。商品選定は眼鏡メーカーの生産時期に合わせて取扱いモデルと発注数を出し、眼鏡メーカーに追加の可能性があるものについて在庫の積み増しを依頼。
これで自社在庫なしで全国60数店舗の店頭にサングラス売り場を確保する事が出来ました。
このようなやり方は、店舗側と眼鏡メーカー側どちらもが量販向け商品を扱い、また、メーカー側が在庫を持っていたため、間で扱い商品を調整することでマッチンングする事が出来ました。
他の取引先小売店へも「Galas」ブランドでサングラスを卸し、また、一部の取引先では、型数を絞り込み取引先のオリジナルブランド名で卸もしていました。
名前を変えるだけでなく、ベースのモデルをメーカーのモデルの中から選び、ブランドのロゴマークを組み込んだサングラスを納める事もありました。
このように、メーカーが在庫を持ち、後付けで名入れが出来る商材だと、見た目だけの簡単なオリジナル商品作りが出来ます。また、企画時期が早ければ、メーカーのモデルをベースにした簡単なオリジナル企画も出来ます。ただし、メーカー在庫頼りの部分もあり、その場合、計画的な売上げ管理が難しく、競争も覚悟しなければなりません。
その後の卸ですが、価格競争が激しくなり、小売店も含めて撤退。大手アパレルは、アパレル内部の知人より「雑貨ブランドを立ち上げたい」との依頼で、取引先の眼鏡メーカーと大手アパレルを直接結びつけ、事業計画書作成を手伝い、アパレルの社内ベンチャーとして眼鏡ショップブランドの事業を立ち上げました。これはサングラスだけにとどまらず、眼鏡ショップとして社員の技術研修も含めた本格的な眼鏡店として、銀座・名古屋・大阪他、多店展開されました。
以上、長くなりましたが、実例を紹介しました。
世の中には様々なメーカー、業態があります。これまで馴染みの無かった業界を結びつける事で、新しい商品企画、ビジネス企画がうまれます。
貴方の業界、どんな業界と結びつけるとスパークするでしょうか?
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