第一回 雑貨のMD 「10:マーチャンダイジングシステム」
今回は、コーディネイターがおこなうディレクションのまとめ方の中で、クラスター分析についてみていきます。今回も、『お仕事クリエイター』からの引用です。
2:コーディネイターの仕事
B)ディレクションのまとめ方
自社(自店)の狙っているターゲットは誰か?次は何を提案するか?
この連載を読もうと考えた時点で、既にあなたの中には大まかな構想が出来ている事でしょう。また、既に創業している方にとっては、充分に考え尽くされた事でしょう。
ここでは、もう一度その基本に戻って考えて下さい。
ファッション業界は店舗規模や場所で様々なショップに細分化されています。各々がさらにシーズン毎に綿密な計画を立て日々のビジネスを展開しています。ここではそれにいたる手法を詳しくみてみます。
『ディレクション』(方針・方向)=ショップとして、次のシーズンは顧客にどのようなファッションを打ち出すか? を意味します。
ディレクションをまとめるために、コーディネイターが行なう作業は、
1) ショップがターゲットとする客層の分析
2) 市場トレンドの分析(ターゲットの落とし込み)
3) テーマ分析(トレンドテーマ/スタイリングテーマ)
これらの分析を行い、バイヤーへ提案します。
また、このディレクションにあわせた販売促進・宣伝・ディスプレイ活動を行い、全てを連動させていかなければなりません。販売員に対してもシーズン立ち上がり前にこの方針を伝え、商品知識やコーディネイトの仕方を充分に理解してもらわなければなりません。
では、ディレクションをまとめるために必要な分析について説明します。
イ)クラスター分析:ファッションやライフスタイルの面から見て、意識や行動、スタイルの似通った消費者郡。様々な角度からクラスターを分析し、全マーケットの中からどの市場を狙うかということを明確にし、その中での自店自社のターゲットの位置付けを確認する。
ロ)ターゲット分析:クラスターにより明確化されたターゲットをより詳細に分析する。
ハ)テーマ分析:次シーズンのトレンドの方向性を大きくつかんだ上で、自店・自社の新しい提案要素となるテーマを選定し、テーマごとに分析する。
以上の大きな3つの項目を分析し、次シーズンの品揃えのディレクションを作成します。
実際のファッション業界では、この中にさらにカラー分析・素材傾向分析・シルエット傾向分析・スタイリングテーマポジショニング・トレンドテーマとスタイリングテーマの関係図など、さらに詳しく分析する場合もありますが、これらの詳細な分析はファッション専門のコースに譲り、ここでは大きなテーマに絞り考えます。
では、まずクラスター分析について説明します。
イ)クラスター分析
アパレル業界では以前から市場細分化(マーケットセグメンテーション)というマーケティング手法が用いられてきました。オーバーストア時代に入り消費者向け販売ルート(小売店・通信販売・ネット販売など)が複雑に、また過剰に確立されると、必然的に顧客の分散・オケージョンの分散(同一顧客が同じ商品を購入するのにも場合により購入経路を変える)がおこり、顧客争奪が激化してきました。
顧客争奪競争を回避するためには、自店・自社の顧客像を明確化(オケージョンも含め)する必要があります。そのためにコーディネイターは、自店・自社の狙うべきターゲット層は、マーケット全体ではどの部分に位置し、どのようなライフスタイル・テイストかを分析しグループ化する必要があります。
では、その分類方法を見てみます。下は一般によく用いられる分類方法です。
お手元のノートをつかって、あなたの業種での分類を考えてみてください。
『マインド分類』:実年齢ではなく、ファッション感覚(マインド)的区分で分類
・ ジュニア=小中学生を中心とするヤングマインド予備軍
・ ヤングマインド=15〜22歳を目安に、若い生活感覚を持った人たち。
・ アダルト&キャリアマインド=25〜28歳くらいを中心とする洗練された大人感覚を持った人たち。
・ ミッシー&エレガンスマイインド=30歳〜の感覚的に落ち着いた大人の女性ながら、いつまでも若々しく美しくありたいと思う人たち。
『テイスト分類』:顧客の持つ流行感覚・トレンドの取り入れ方を見る目安として、感度レベルの物差として使われる
・アドバンスド=流行・ファッションに対して敏感で、いつも新しさをいち早く取り入れる事に関心のある人たち。
・アップデイト=流行しはじめの新しさ、今日的な感覚のファッションを求め、暮らしに新しさを取り入れようとしている人たち。
・エスタブリッシュド=流行にあまり左右されず、安定したファッションを求める人たち。
『トレンド感覚分類』:消費者の持つライフスタイル・ファッションへの基本的志向で分類
・ クラシック&マニッシュ感性=基本的に伝統的な物、正統派的な物が好きである人たち。
・ エレガンス&フェミニン感性=基本的に上品で優雅、女らしい物が好きであるといった人たち。
・ スポーティー&カジュアル感性=基本的に活動的で明るく、自由な物が好きであるといった人たち。
以上は、顧客分類をするうえで一つの物差となる分類基準のいくつかを紹介しました。
今度は、これまでのような分類基準を用いたレディースマーケットにおけるファッションクラスター分析を例にとって、作表の具体例を見てみます。
表中の2つの専門店は、クラスター分けをした場合の各々のポジションを表します。
このクラスター表の中に、知っているショップ・ブランド・女性向けファッション雑誌などを当てはめてみて下さい。
この表ではテイスト分類は含めませんでしたが、これ以外にクラスター分類の構成要因として、
職業・居住エリア・ライフスタイル特性・ファッション感度・購買意欲・好きな雑誌、また扱う商品やサービスによっては職歴・旅行歴・結婚歴など様々な分類方法が存在します。
あなたの取り扱う商品、ターゲットに着いて、様々な角度から分析してみください。
では次回は、
ロ)ターゲット分析
ハ)テーマ分析
について説明いたします。
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